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対中国で軍の再編急ぐアメリカ 「海兵沿岸連隊」創設の狙いは? 日向備忘録

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対中国で軍の再編急ぐアメリカ 「海兵沿岸連隊」創設の狙いは? NHK報道です

MLRの話題ですね

↓NHK
2023年5月30日
アメリカ
対中国で軍の再編急ぐアメリカ 「海兵沿岸連隊」創設の狙いは?

“世界最強”を誇るアメリカ軍で、いま大規模な再編が行われています。

再編の柱の1つが、アメリカ軍の象徴ともいえる「海兵隊」に創設された新部隊です。

その名も「海兵沿岸連隊=MLR」。

再編では、海兵隊の戦車大隊をすべて廃止する思い切った決定もなされました。

見据えるのは、急速な軍備の増強を進める中国。アメリカ軍の改革の実態に迫ります。

(ワシントン支局記者 根本幸太郎)

ハワイに発足、新部隊「海兵沿岸連隊」
狭い部屋で肩を寄せ合い、話し込む屈強な兵士たち。ここはハワイに駐留する「第3海兵沿岸連隊」の司令部です。


ことし5月15日、私たちは単独で取材することを認められました。取材中、2階建ての建物にある司令部には、部隊の幹部たちが詰め、作戦や演習の計画を立案していました。

2022年3月、ハワイに新たに発足した「第3海兵沿岸連隊」。およそ2600人の海兵隊員が所属し、今後の実戦投入に向けて、日々、演習や訓練を繰り返しています。


第3海兵沿岸連隊の発足式(2022年3月)
“最前線”に投入されてきた海兵隊
海兵隊は、陸軍、海軍、空軍などと並ぶアメリカの軍隊の1つです。海上からの上陸作戦を行うほか、陸上で作戦を遂行する能力や独自の航空戦力も持っています。有事の際には、世界各地に緊急に展開する「即応部隊」と位置づけられています。


第3海兵沿岸連隊 フィリピンでの訓練
1775年のアメリカ独立戦争中に創設され、第1次世界大戦や第2次世界大戦、ベトナム戦争、それに湾岸戦争などで、最前線に派遣されてきました。

太平洋戦争末期に日本軍との激戦地・硫黄島のすり鉢山で、海兵隊員6人が星条旗を掲げる姿をとらえた写真は、最も有名な戦争報道写真とも言われています。


硫黄島で星条旗を掲げる海兵隊員(1945年)
その海兵隊が近年、従事してきたのが、「テロとの戦い」です。2001年の同時多発テロ以降、20年間続いたアフガニスタンとイラクでの「2つの戦争」では、戦車大隊を投入するなどして、陸上作戦で中心的な役割を担いました。

対中国で再編急ぐ
“世界最強”のアメリカ軍の一角をなす海兵隊。今、抜本的な再編に乗り出しています。

見据えるのは政治・経済・軍事において、アメリカに肩を並べようと試みる中国の動きです。

2020年3月、海兵隊は「2030年の部隊設計」と名づけた今後10年の再編計画を発表。この計画で強調されたのが、これまでの中東などでの過激派組織との戦いから、大きな軍事力を持つ中国を抑え込むための戦力の構築です。


海兵隊が2020年に発表した「2030年の部隊設計」の表紙
その覚悟ともいえる“決断”が計画に盛り込まれていました。「戦車大隊」の廃止です。

アフガニスタンでの軍事作戦などに投入されてきた戦車大隊について、「将来の最優先課題に対して、作戦上、適切な戦力ではない」と断言。すべて廃止する方針が明記されたのです。


アフガニスタンで投入された海兵隊の戦車大隊(2011年)
海兵隊は450両以上の戦車を保有していましたが、すべて陸軍に譲渡することを決定。

想定される任務の主な地域が「内陸部」から「沿岸部」へと移行する中、戦車は海上輸送に大きな労力がかかるという分析からでした。

そして、そのかわりに新たに創設されたのが「海兵沿岸連隊」でした。

“小規模・機動力”重視の新部隊
「海兵沿岸連隊」の最大の特徴は、「敵に見つかりにくくする」ということを追求した点です。重視されたのが“小規模・高い機動力”。小規模の部隊が分散することで、敵の目をかいくぐり、展開する戦術をとります。


任務を行う地域は、西太平洋のような海上に離島が点在する場所を想定。有事の際には、水陸両用の艦船などで離島に上陸し、少人数からなる部隊が素早く移動しながら、敵の艦艇や戦闘機の偵察、さらに攻撃まで担います。

部隊には、高い攻撃力を持つ兵器も配備する予定です。それが、新型兵器「NMESISネメシス」です。


敵の艦艇を遠距離から攻撃できる「NMESISネメシス」
遠隔操作ができる無人の軍用車両に、射程180キロを超える対艦ミサイルを積み、海上を航行する敵の艦艇を遠距離から攻撃することができます。離島にいながら、近くの沿岸を航行する敵の艦船を攻撃して、作戦を支援するのが狙いです。

中国軍の「接近拒否戦略」に対抗
なぜ、海兵隊が戦車部隊を廃止してまで、小規模な機動力の高い部隊に変化させたのか。

背景にはあるのが、中国軍が進める「ミサイル能力の向上」です。


台湾周辺での軍事訓練でミサイルを発射する中国軍(2022年公開)
アメリカ国防総省は、中国が台湾有事などの際に日本列島から台湾、フィリピンへ延びる「第1列島線」の内側に、アメリカ軍の部隊を近づけないようにする、いわゆる「接近拒否戦略」をとると分析しています。

そのため、中国軍が本土から発射して、そのエリアを正確に攻撃できるミサイルの能力を増強させていると警戒感を強めています。


この中国側の「接近拒否戦略」をかいくぐって、「第1列島線」の内側にとどまり、作戦を実行することが期待されているのが、「海兵沿岸連隊」なのです。

第3海兵沿岸連隊の司令部で話を聞いた兵士は、いわば「敵のふところ」近くにいることで、相手の動きを把握し、有効な反撃を行えると強調していました。


火力支援調整を担当 第3海兵沿岸連隊 デビッド・パラッシオ中佐
パラッシオ中佐
「世界では『接近拒否戦略』の課題として現れているが、われわれが存在する理由のひとつは敵の兵器の交戦区域で活動することだ。その中にいることで、敵の脅威を認識し、そして後退させる手段を提供する」

台湾有事ではどう動く?
アメリカの専門家や軍の元高官の中には、中国が2027年より前にも台湾統一に乗り出す可能性を指摘する声があります。

2027年は、習近平国家主席の党トップとしての3期目の最後の年にあたり、4期目を見据えた実績づくりを目指すのではないかというのが根拠の1つとされます。


軍事パレードに参加する 中国 習近平国家主席(2019年)
では、もし台湾有事が起きたときに、海兵沿岸連隊はどう動くのか。

海兵隊の戦略に詳しいダコタ・ウッド氏の想定では、中国による台湾侵攻の兆候が確認されたあと、沖縄に駐留する海兵沿岸連隊が日本から南に点在する離島のうち、作戦上、最も有効な島に航空機や水陸両用の艦船で上陸。しばらくの間、静かに潜伏し、中国の台湾への侵攻に備えるといいます。

そして、離島から攻撃を行うことで、中国の台湾への侵攻計画を混乱させる効果があると指摘します。


ヘリテージ財団 ダコタ・ウッド上級研究員
ウッド上級研究員
「中国を見ると非常に能力の高い空軍や潜水艦、長距離ミサイル、それに増強を続ける海軍を持っている。アメリカ軍はこれまでとは違った戦い方をすることになる。海兵沿岸連隊は、小さな島々から、台湾に向かおうとする中国軍への妨害や攻撃を行うことができるため、中国は台湾だけに焦点をあてられず、注意をそらされることになる」



“アメリカはそこにいる”
中国を抑え込むため、戦力の構築を図る海兵隊。

しかし、その大規模な再編に対しては元幹部らから公然と反発する声も上がっています。

「改革が急すぎて中国以外の脅威に対応できなくなる」というのがその理由です。

特に「戦車大隊を廃止する」とした判断に対する波紋は大きく、「400両の戦車に加えて、人材もいなくなる。再編が実施されれば海兵隊が存在しなくなる」などと強い批判が出ています。

それでも、今の海兵隊執行部は、再編をさらに推し進めていく考えです。

一連の再編を主導してきた海兵隊トップのバーガー総司令官は、2023年4月、議会の公聴会で、こう強調しました。


米海兵隊 バーガー総司令官
バーガー総司令官
「太平洋地域は中国海軍にとってホームゲームのようなものだが、われわれは最初からそこにいる部隊にならなければならない。なぜなら、同盟国やパートナーが『アメリカは逃げていない』と信じる必要があるからだ」
「厳しい状況になってもアメリカはそこにいる。それが海兵隊や海軍だ」

取材後記
海兵沿岸連隊の取材を通して見えてきたのは、中国を現実の脅威と想定し、有事が起きた場合に、いかに食い止めるかを真剣に考えるアメリカの姿でした。

それと同時に、日本のすぐ近くの海域を有事が起こりうる場所として想定し、準備を進めているという現実です。

仮に有事となった場合に、海兵沿岸連隊が活動する離島で、住民に大きな被害が出ることはないのか。また、そのとき、日本の自衛隊にはどのような役割が求められるのか。

目を背けられない、重い課題が突きつけられていると感じました。

アメリカを国際ニュースナビで深掘り

ワシントン支局 記者根本 幸太郎
2008年入局 水戸局、政治部、経済部を経て現職
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